乳滴/2024年7月1日号
野草食べていた棟方家
「わだばゴッホになる」との有名な言葉で知られる版画家の棟方志功氏(明治36年~昭和50年)。苦楽を共にし、支えた妻・チヤさんとの人生を描いた「板上に咲く」(原田マハ著・幻冬舎)を読んだ。青森の貧乏青年がいかにして「世界のムナカタ」となったのか?常人とは違う強靭な意志(精神)の力を感じることができる。
その中に、上京したものの、満足な収入がなかった昭和9年の東京・中野時代の話がある。親子4人暮らし。畑の畦道で野草(ヨモギ、オオバコ、タンポポ、ふき等)を摘んだ。沢山集めた子供が母に「いがったね」と褒められて、うれしそうな表情をみせた。十分な米を買う余裕がなく、3日に2日は米の代わりに野草が食卓に上ったという。そんな時代もあったのか、と感慨深いが、そんな時代が再び来ないでほしい。
政府は食料・農業・農村基本法を改正し、6月5日に施行した。食料安全保障と食料の適正な価格形成を促すのが柱であるが、併せて関連法として食料有事への備えとしての「食料供給困難事態対策法」等も6月14日に成立。来年6月までに施行される。
近年、紛争・戦争や気象災害、エネルギー価格の高騰などのリスクが高まっている。不測ではなく、平時からの備えが重要ではないか。