乳滴/2025年1月1日号
拝啓、財務省担当者様
43年前、初めて本会の欧州酪農視察に参加した。「EC(現在のEU)に追い付け、追い越せ」が合言葉だった。〝終わりなき〟規模拡大と合理化競争。「その行く末にはバラ色の夢が広がるのだろうか」と帰国後に本紙に記した。コストダウンの努力は続けつつも、歴史と土地条件等の要因を消費者に理解してもらい、「日本独自の酪農が全国産業として成立させる可能性を模索するべきではないか」と欧州の風土や市民を見て感じたのだ。
今思うのは、国の政策担当者、特に財政の担当者に、ぜひとも酪農の生産現場の実態を見てほしいということだ。初動5年間は「農業構造転換集中対策期間」と政府は位置付けた。ぜひ食料安保の中で基礎食料である酪農・農業予算を大幅に拡充してほしい。
2023年の農業産出額約9.5兆円のうち、畜産が39%でトップ。次いで野菜が24%、米が16%と続く。畜産農家(24年・畜産統計)では、21年前と比べ、酪農以外でも肉用牛3万6500戸、養豚3130戸、採卵鶏1640戸となり、5~6割減少した。畜産農家計5万5220戸(ブロイラー2050戸含む)が、タンパク質をはじめ消費者の生命・健康を支えている。このことを訴え、理解を求め、新たな本欄執筆者にバトンタッチしたい。