乳滴/2024年12月20日号
農村の生活インフラ
ひと月前の季節外れの夏日が懐かしくなる霜と氷の朝。冷たい空気の中で大根・白菜・ねぎが太り、葉物野菜は緑を濃くして食卓を彩る。暑い頃に収穫してあったカボチャ・サツマイモが甘みを増し、庭のミカンもたわわに光る。残念ながら今年も2等米だったが、コメと野菜は食べ放題。茄子・きゅうり・トマト・ニガウリばかりの夏に比べ、秋冬のほうが家庭内食料自給率が高まる印象だ。
熱中症におびえながら炎天下で働くよりも、日照時間が短いのが弱点ながら蚊・蜂・毛虫のいない冬のほうが、農作業はだんぜんラクで(関東地方平野部の場合)、近所の農家も同様と見え、畑で会って立ち話をするのは寒い時が多い。
話題になるのはお互いの近況のほか、たいてい①今年で田んぼを止める誰々の分を来年は誰々がやるようだ②集落の役員分担(集落行政と神社)の今後の見通し、の2点。いずれも「担い手確保」の問題で、過疎・高齢化が進む農村では切実。
コメ・野菜食べ放題程度では病院、学校、コンビニが遠い等、農村の不便な部分を補えないのは分かる。農業以外に産業のない農村を魅力あるものにするにはどうすべきか。食料安全保障・自給率向上と合わせて、農村の生活インフラ対策も考えないと、過疎化は進む一方だ。