乳滴/2022年1月1日号
酪農危機打開のために

乳製品の過剰在庫対策に追われる酪農乳業界だが、生産現場では「令和の酪農危機」が同時進行している。生産コストの上昇(所得低下)に苦しむ酪農家は、存続にかかわる非常事態といえる。再生産と未来への投資を確保できる乳価水準は必要不可欠だ。
季節別乳価格差の大きい地域では、冬乳価では「飼料代の値上がりが大きすぎて乳代精算をみると、非常に厳しい経営内容だ」と心配する声が聞こえる。配合飼料価格安定制度の補てん金が交付されるのは、約2カ月後になるため、その間の資金繰りも大変だ。
「平成の酪農危機」の時を振り返れば、飼料高騰により、2007~08年度(平成19~20年度)の第1次酪農危機、12~13年度(平成24~25年度)の第2次酪農危機によって多くの酪農家が離農した。当時もシカゴのトウモロコシ相場が一時7~8㌦を突破し、6㌦台で高止まり。円安が加わった。
配合飼料価格の補てんは、直近1年間の基準輸入原料価格を上回った場合に差額を支払うもの。このため、配合飼料価格の急騰は20年第3四半期(10~12月期)であるから、このまま高止まりの状態が続けば、補てん金額が減少せざるを得ない。乳価も含めて何としても経営に対する努力を超える生産費上昇対策が必要だ。