乳滴/2022年4月10日号
営農への深刻な被害

武力紛争での文民保護を目的とした「ジュネーブ諸条約」に「文民を飢餓の状態に置くことは禁止する。したがって食糧、食糧生産のための農業地域、作物、家畜、飲料水の施設及び供給設備、かんがい設備等文民たる住民の生存に不可欠な物を、文民を飢餓の状態に置くことを目的として攻撃し、破壊し、移動させ又は利用することができないようにすることは、禁止する」との記述がある。ロシアも締約国のひとつだが、すでに一般住宅や病院も攻撃されており、人命が危機にさらされているなかで、やはり、戦火の激しい地域で畜舎等施設への被害が出ている。国連食糧農業機関(FAO)がウクライナ国内の食料、農業への戦争の影響をまとめたなかで伝えている。
直接的な攻撃の被害ばかりでなく、貿易の停止、物流の混乱による影響も深刻で種子、肥料、資材供給が大幅に減少しており、春の作付への影響は必至。特に燃料は輸入頼みでガソリン・軽油の7割がロシアとベラルーシから。畜産では動物薬、飼料の供給減が問題になっている。不発弾、地雷、埋葬されない兵士の遺体が農地に放置されているとの情報も。
種子、肥料の減少は即ち収量減少を意味する。仮に今すぐ攻撃が終わったとしても農産物の生産回復には時間がかかるに違いない。