乳滴/2022年6月1日号
後継者の精神的ダメージ

「このままでは酪農を続けられなくなる」と将来、組合を支えるであろう後継者が役員に「訴えてきた」。先日、東北地方の組合に伺った時だ。今回の生産コストの急激な値上がりは、将来の酪農を担う後継者に、経済的な問題に加え、精神的にも大きなダメージを与えている。
乳代から経費を差し引いた残りの額が余りにも少ない実態を訴える手紙が本会にも寄せられた。正当な労働の対価と言えないショックを受ける乳代清算の金額だ。7月以降も配合飼料の大幅な値上がり必至の情勢の中で、自助努力で解決できるレベルを超えている。政府による緊急対策に加え、生産者乳価(飲用・加工向け)の期中値上げが必要な「酪農人生で過去に経験したことのない最大の経営危機である」という悲鳴だ。
手紙には、新型コロナウイルスにより学校が一斉休校になった20年3月時点で、生産抑制をするべき状況だったのではないか。また、大型設備投資を行った酪農家には、利息の返済のみとし、元本返済を繰り延べしてはとの対策要望も記してある。
いずれにしても、今後の日本の酪農を担う後継者をはじめ、酪農家の所得を守るためには、乳価交渉に期待せざるを得ない。時間がかかればかかるほど、将来への禍根を残すことになる。