乳滴/2022年9月1日号
不吉な岩の出現

今年は多くの地域で6月中に梅雨明けし、その後、記録的な暑さに加え、局地的豪雨で洪水被害が多発。農地・農業施設が冠水被害を受けた。農水省によると8月3日からの豪雨による農林水産関係被害額は421億円にのぼる。
一方、海外では深刻な水不足の情報が。中国・揚子江の流域には重慶、武漢、上海など重要な都市があるが、ドイツ国営放送は「水位は前例のない水準に低下し、重要経済都市に電力を供給する水力発電への影響は必至」(8月22日)と伝える。一方で「欧州は500年に一度の旱魃に直面」とする科学者のコメントを紹介。
欧州でも猛暑と旱魃で主要河川の水位が異常に低下、通常は水面下に沈んでいる「ハンガーストーン」が出現し話題になっている。訳せば「飢饉岩」か。旱魃・飢饉に苦しんだ昔の人が、その記憶を後世に伝えるため水位低下で露出した岩にメッセージを刻んだ、タイムカプセルのような「遺跡」だ。それがこの夏、ライン川、ウェーザー川(独)、モーゼル川(仏)、エルベ川(チェコ)の川岸で現れた(ルモンド、8月20日)。最も古いものは1417年の記録という。
戦争で国際的な穀物需給が不安定になっているところに旱魃の追い討ち。日本にとって他人ごとではない。