乳滴/2022年12月10日号
田舎が舞台の映画

田舎が舞台の青春映画2題を紹介したい。まず「Codaあいのうた」(米、仏、加。2021年)。CodaとはChild Of Deaf Adults(聾(ろう)者家庭の子)の意味。キレッキレの手話と主演少女のかわいらしさが魅力のコメディドラマだ。漁業を営む4人家族のなかでただひとり耳が聴こえる主人公。家族と社会を手話でつなぎながら、恋愛や進路に悩みつつ高校生活を送っている。地方の美しい漁村が舞台であることも、田舎育ちの自分には親しみが持てた。
調べたところ「エール!」という作品(仏、2014年)のリメイク版と分かり、早速これも見た。こちらも家族でただひとり耳が聴こえる少女が主人公だが、舞台はフランスの酪農家で、牧場やマルシェのシーンが楽しく描かれている。トラクターで畑に出かける途中、ポーチで悩みごとに沈む娘を見かけてキャビンに招き入れ、相談にのるヒゲオヤジ。…俺もこんなふうに鷹揚に家族の相談相手にならなきゃな…と思ったり。
ともに字幕があるので手話が分からなくても大丈夫。聾者の苦労を織り交ぜつつ、日々の仕事に汗を流し、経営の危機に家族一丸となって立ち向かう様子には共感できる部分が多々ある。両作品ともオヤジ役がいい味を出しており、とても励まされた。