乳滴/2023年1月1日号
新春とはいうものの

暮れも押し迫った昨年末、事務所に「どこに話したらいいか分からないがとにかくあまりに厳しい現状を知ってほしい」という九州の方からのお電話を受けた。おおよそ次のような内容だった。
息子に経営を渡し、組合の理事もだいぶ前におりて現場を離れて久しいが、今の状況はとてもではないけど黙っていられない。今までは真面目に働いていれば生活できたし、借金も返せた。それが今のような厳しい状況になってしまった。乳代はエサ代でなくなってしまい蓄えはとっくに使い果たし、借金で暮らしている。他の酪農家も同様と思うが、この状況がいつまで続くのか。
酪農はもう限界だ。仮に酪農家が減れば困るのはまず消費者。今、牛乳が値上がりしただの、安いほうがいいだの言っているけど、そのうち買いたくても買えない値段になってしまう。酪農家が破産すれば団体もやっていけないし、国にとっても大きな損失になることを認識してほしい。
農業は国の基。特に酪農は草や飼料を作って土地を管理することで、重要な役割を果たしている。国には、もっと真剣に農業のことを考えてほしいのだが…。新年、新春という清々しい言葉とはかけ離れた重苦しい現実の中で迎えた令和5年。今年こそ額に汗して働く人が報われる年に、なってほしい。