乳滴/2023年3月10日号
安定供給への不安
平成の第1次酪農危機と言われた07~08年度当時、飼料高騰により酪農所得が急激に減少。09年度の食料・農業・農村白書によると「酪農家の1時間当たり所得が766円と学生アルバイト代よりも安い状況に落ち込んだ」と報告された。
ところが、現状は過去最悪。多くの人は乳価で物財費すら賄えない状況にある。飼料費等ほとんどの経費が上昇。従来は生活費を助けた子牛等の副産物収入も激減し過去の貯蓄を取り崩して生活している異常ともいえる状況に陥った。肥育等の他の畜種に転換した話も聞くし、家族の中でやむなく外に働きに出る人もでてきているという。
現状は、もっと儲けたいと求めている訳でなく、せめて生産費上昇分を乳価に織り込んでほしいという最低限の願いが実現していない。乳価の再値上げが渇望される訳である。再生産が可能になる適正な乳価水準が確保されなければやがて生乳の安定供給は、ままならなくなる。前号にあるように、酪農家の離農の急増というのは苦渋の選択である。
未来の生乳供給を担う酪農後継者にバトンを継ぐためには、再生産に加えて「未来への投資分」とか、「夢のある」「元気の出る」分の費用も見込める位じゃなければ本来は魅力があるといいがたい。