乳滴/2023年3月20日号
タマゴ代にと千円札

昔、母の実家で祖母が「これでタマゴでも買え」と伊藤博文の千円札を母に渡すのを何度か見たことがある。大人でも親からお小遣いをもらうのかという発見。そしてキーワードは「タマゴ」。あのやりとりは40年以上たった今も覚えている。
他家に嫁いだ娘に、自由になるお金は無いのではと案じる親心から出た千円札だろう。近年戯れに母に「これでタマゴでも買え」と祖母の物まねをしたら「それだけ昔はタマゴが貴重品だったの」としみじみ言った。
業界を挙げた努力の結果、高品質かつ手頃なタマゴが安定的に供給される時代が長く続いたが、今、飼料高騰と鳥インフルエンザの影響で値上がり。報道によれば「エッグショック」と言うようだ。値上がりばかりか欠品、原料にタマゴを使う食品が製造休止になる状況も生じている。
新型コロナ禍で需給緩和に陥った酪農も、コスト高とそのストレスに圧し潰されかかっているが、一方で業界を挙げて生産基盤維持への模索が続いている。
コロナ禍からの脱却に動き出したこの春、過去3年とはうって変わって街や野山に大勢の人出がある。景気にはプラスだろう。景気が上向けば需要は必ず回復する。その際の対応力を涵養するこの春であると信じている。