乳滴/2018年12月20日号
秋山氏、半世紀の重み
仕事や趣味でライフワークと言えるものがあるだろうか。心に秘めたままでもよい。生きてきた証ともいえる自分なりに精魂込めてきたものだ。
本紙に1965年から2015年まで半世紀余り四コマ漫画「ラクさん」を連載していただいた漫画家の秋山賢一氏(群馬県高崎市)から近況の知らせがあった。先頃、病のため3カ月ほど入院・療養をしていたとのこと。一度として連載を休んだことがない同氏の仕事にかける熱き情熱とプロフェッショナルな健康管理に対して常に尊敬していたものだ。
自宅で倒れ、救急隊員が搬送に来た時。隊員が同氏の画いた酪農技術マンガ集「続牛飼いの眼」(本会発刊)をかざして、一言「スゴイ」と感嘆したという。本人は「ナンダ!コンナトキニ」「ナンデココニ在ル」と思ったとのこと。まさしく「吾が分身との出合いだった」と感じたという。
同氏は「マンガを画いてほしい」と、いとも簡単に頼む、その姿勢を嫌う。「やせても枯れてもプロだ。プライドもある。農家が見も知らない人からコメ一俵でもいいから、少しくんねえかね」と言われ、くれる農家があるかという。仕事には頑固である。ラクさんを通じて表現した半世紀余りの酪農や世相が本紙を通じて後世に残る。その心意気を受け継ぎたい。