乳滴/2019年2月1日号
新年度からの価格転嫁
「農畜産物の販売価格を農家自らが決定することができれば」というのは、変わらぬ長年の願いである。牛乳の場合、以前より東大大学院の鈴木宣弘教授が①メーカー対スーパーの取引交渉力における優位度は、ほとんど0対1で、スーパーに圧倒的な力がある②酪農協(指定団体)対メーカーは最大限に見積もって、ほぼ0.5対0.5、最小限では0.1対0.9でメーカーが優位である――との研究成果を発表してきたが、今回の交渉も難航した。
昨年12月28日に関東生乳販連が大手乳業3社と飲用牛乳向け、はっ酵乳向け1㌔4円の引き上げで決着したが、今後は乳業メーカーが取引先のスーパー、生協等の小売業者へ新年度からの店頭価格への引き上げ(価格転嫁)に向けた説明と理解を得ることになる。
乳業メーカーも原料の値上げ以外にも人手不足等による物流費の上昇、包装や資材等の値上がりにより、生産コストが上昇している。特に中小や農協系乳業の場合、大手乳業と比較して原料や生産コストなどが相対的に高く乳製品など他の商品でカバーする余地も少ない。学乳向けは据え置き方向であり、何としても価格転嫁を必要とする。
新年度までの時間的な余裕も限られているが、都府県の酪農にとっても活性化のカギである。