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今回紹介します「ほらふき男爵の冒険」はとても愉快な冒険物語りになっています。物語りの後半で思わず興奮するのが島全体がチーズで出来上がっており、流れる河は全て生乳といった中味です。世界中どこを探してもそんな島や住人がいるわけではありませんが、文学作品の中にこれだけ生乳や乳製品をたっぷりと素材に使っていることは、嬉しい限りです。ほらいっぱいの冒険物語りですから全て奇想天外、思わず「ほらもいいかげんにしナッ」などとつぶやきながら一気に読ませます。酪農、乳業の世界もいろいろとむずかしい話題で満ちていますが一読をおすすめします。

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島全体がチーズ 流れる河は生乳

1985-12-01

大ほらもこの位になるとなんとも痛快である。どのくらい壮大かといえば、ほらふき男爵がエトナ山という噴火山の火口にとび込み、その底にすむ神々に出会い、いろいろと不思議な体験をするのだがここの神様の奥さんと親しくしたため(実際はつげ口されたのだが)誤解され、亭主の神様にほうり出される。


ほうり出されたところが、なんと地球のド真中をつっきって反対側の海面に浮かび出るといった具合ですから、これから紹介する島全体がチーズで出来上った島での冒険談の前後の男爵の大ほら(冒険)もわかろうというものです。


洋上を泳いでいると、そこに船がきて助けられるが、この船が暴風雨に出くわして、どこをどう流されたのか3ケ月後に、ある島を発見して近づきます。


船乗りたちは島の入江に近づいてこの上もなくすばらしい香りがいっぱいに漂ってくるのがわかりました。そして緑色の海も、白い色に変化している。


そうです、入江近くの河口から海面に流れでているのは牛乳なのです。牛乳というよりも生乳でしょう。島の川は全て生乳なのです。


上陸してみると二度びっくり、島全体がチーズで出来上がっているのです。地面が何故にチーズであったかがわかるのは次の文章をお読みいただければはっきりします。


『(前略)つまり乗船の水夫に1人、性来のチーズ恐怖症の男がありましてナ、上陸するや否や、この男失神して倒れおった。そして意識をとりもどすと、足の下のチーズを除けてくれ、と懇願したのじゃね。調べてみればなるほど、こやつの言分が全く正しいと判明し、すでに申したように、島全体が巨大なチーズに他ならなかった。島の棲息者(もの)は主にこれを食って暮らしているのでありますが、日中食われた分が夜になると必ずまた増えてくるのであった(後略)』


ナポレオンはチーズの匂いで妻との夜のいとなみを断わったという故事がありますが、陸全体チーズならば、チーズ恐怖症の人なら気絶しても当たり前のはなし、ということになります。


壮大なほら吹きは続きますが、その第2弾が、島にはたくさんのぶどうの木があり、見事な大きな房がなっていますが、驚くことに、このぶどうの中味がずべて生乳なのです。


ぶどうをむけば中からミルクとは奇想天外ではありますが、日本のぶどうの産地、山梨の勝沼や、北海道の十勝などが頭に浮かび上ってくるから不思議です。北海道でも十勝、山梨では勝沼、この周辺の酪農家は果樹農家と手を組み現地産ぶどうミルク(ただし現地飲用者?のみ)を栽培飲用してもらうという消費拡大策はどうだろうか、などととてつもない発想にしばし読書をやめて狂想にふけるのですから、やはりこの作品は、かなり壮大なほら集成といわねばなりません。


また、この島の住民も変わっています。手は1本で足は3本、大人になるとひたいのまん中に角(一角人間?)がはえているというから見事なものです。


さて、次の文章をお読み下さい。『(前略)この島ないしチーズですかナ、ここにはまた大量の穀物が成長していたが、その穂はキノコのような外観をしておりまして、その中にすぐ食えるこんがり焼けたパンが含まれておった。このチーズ島探検ではそのほかに7本のミルク河と2本のワイン河もみつかったのであります』といったあんばいです。


徹底して牛乳と乳製品が現われます。チーズ好きの人の中でもブルー・チーズがことのほか好き、という人もいるわけですが、なんとこの一大地区がブルー・チーズの基地なのです。


それにしてもこの作者、島全体がチーズで、流れる河は生乳で、ぶどうの中身がこれまた生乳とは、一体どこの国をモデルにして書いたのでしょうか?


それにしてもまことににくめない愉快な冒険物語りです。

本連載は1983年9月1日~1988年5月1日までに終了したものを平出君雄氏(故人)の家族の許可を得て掲載しております。

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