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この南インドの昔話「仔牛の一件」には〝仔牛のすりかえが判ったお話〟というサブタイトルがついていますが、この時代に有名だったというマリヤーダイラーマンという判事の事件簿のようになっており、素材は2人の酪農家の盗難(隣接の農場からメス仔牛を盗み自分の牛にしてしまう)事件を裁くお話です。


この裁きの最大のポイントは、他人が仔牛のときからこっそり他家の乳牛を盗みとり、飼育して、自分の牛のようにみせかけようとしても、長い間飲み続けたわが家の原乳の味によって、他の家の原乳とは判別できるということです。わが家の原乳の味とは何か?昨今妙に考えさせられる、インドの昔話です。

仔牛の一件 インドの昔話より


原乳の味を知れ 判事の計略見事

1987-09-01

昔、南インドに乳牛を多頭飼育している酪農家と、10頭飼育している酪農家が隣り合わせに住んでいた。多頭飼育の酪農家は『かれのところには、群れをなすほどたくさんの牛がいた。』と書かれているから100頭位は飼育していたにちがいない。


一方、10頭飼育の経営概況は『群れをなすほどではなく、たったの10頭だった。』とわざわざはっきり飼養頭数を出しているところが妙です。


さて、ある日多頭飼育の酪農家(以後多頭さんと呼ぶ)は、よその村に出かけるため10頭飼育の隣の酪農家(以後10頭さんと呼ぶ)に牛の世話をお願いして、自分の牛の群れの面倒をよく見てくれるようたのんで出かけました。


何日かたったある日、10頭さんは多頭さんの牛の群れの中から3頭のメスの仔牛を連れ出して、自分のところの非常に質の悪い3頭の仔牛と入れかえてしまったのです。


何日かして、よその村から帰った多頭さんですが、たくさん牛がいるので、3頭のメス牛が入れかえられたことなど気がつきません。さらに、何日かして、群れをなしている自分のところの牛が病気にかかって次々に死んでしまって、乳牛を飼育していたなどという形跡さえなくなってしまうのです。1頭か2頭は生き残ったのでしょうが全滅に近い状態です。


自家飲用にもこと欠く多頭さんは、困りはてて、10頭さんに人をやって牛乳をもらってきます。多頭さんはそれをわかして飲みます。その牛乳はとても味がよく、かつてのわが家のおいいしい牛乳と同じなのです。もっとも、同じ香り、味、舌ざわりなどとは書かれていませんが、この昔話のポイントはここから始まるわけです。


ですから、こう書かれています。『牛乳はとても味がよく、かれはすぐ隣家の主人がだましたことを覚った。』とあります。メス仔牛は立派に成長し、体形のよい母牛となって高品質の原乳を出していたわけですが、わかした牛乳で、わが家の乳牛と覚るなどすばらしい酪農家といわざるをえません。


さて、多頭さんはさらに理詰めです。『この乳を出した牛はわたしのものです。10頭しか牛をもっていなかった隣家の主人が、私の仔牛を盗んで飼っているのです。』といって裁判所に訴えたのです。


ここで、大岡越前守ならぬ南インドのマリヤーダイラーマンという判事さんが名裁きをするわけですが、この判事の手のこんだ計略がすごい。一方、勿論何の証拠もないとして10頭さんは逆告訴をするわけです。要するに泥試合の様相を含んでおります。


南インドの越前守は長いあいだ思案したあと、この2人に15日たったらここに来るように言い2人を帰しました。そのあと部下に命じて2つのことをさせた。1つは羊のふん、牛ふんと台所のごみの三種類の肥料を使って別々に青菜を栽培させた。青菜が成長すると、その三種の青菜を使ってひとまとめにしてカレーを作った。その青菜カレーに、牛乳のヨーグルト、水牛の乳のヨーグルト、羊の乳のヨーグルトの三種類のヨーグルトをいっしょに注いで、よくかきまぜた。


さて、やって来た2人を前にして南インドの越前守は、そのカレー料理を2人に進めた。


多頭さんは、おいしそうによく味わってたべました。10頭さんは、いささかも味わい楽しむことなく、ただ、ただ黙々とたべました。たべ終って判事は、食事はどうでしたか?と別々にたずねます。多頭さんは次のように答えています。『三種の肥料で育った青菜に、三種のおいいしヨーグルトの全部を、わたしは舌で味わいわけて心ゆくまで楽しみました。』と。


隣家の10頭さんは、というと何も答えられず泥人形のようにおし黙ったままだったのです。これらの状況から南インドの越前守は次のように断を下しました。


『農夫が正しく、隣家の主人は悪党である。』まあ、手のこんだトリックに10頭さんはひっかかってしまい、自分自身の口からメス仔牛の入れ替えを白状するハメになり、それ相応の罰が下され、一方、多頭さんは数々のほめ言葉をちょうだいする、という名誉に浴する結果となったのであります。


昔のことですから、牛の登録書も乳質の検査もなく、多頭さんの味覚が勝訴の決め手となったわけですが、飼養管理から牧草の育成など絶大な自信がなければ、今日といえども無理だったでしょう。それと、毎日自家飲用をしながら、自分の乳牛から搾る原乳の味(香り、こく、うまさ)を十分に研究し、知りつくしていたにちがいありません。


それにしても青菜のカレーにヨーグルトを入れて食べると、どんな味がするのでしょうか。

本連載は1983年9月1日~1988年5月1日までに終了したものを平出君雄氏(故人)の家族の許可を得て掲載しております。

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