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「女の一生」で有名なモーパッサンは、中短編小説を360編も書いているそうですが、今回紹介します短編小説「オラル」は精神異常者をテーマにした恐怖小説ということになります。小説の中の男は、水と牛乳だけを飲みながら病と闘っているわけですが、男の内面にとりついている悪魔オラルも、また水と牛乳だけは飲んでいる、といった設定です。 水と牛乳だけ飲んで存在する悪魔?というのも奇抜なアイデアですが、多分牛乳の持つ効力を作者が十分に理解したからこそだと思います。作者は43才の若さで死んでいますがもっと牛乳を飲んでいれば、などと考えさせられます。

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悪魔も水と牛乳 精神異常者の糧

1986-12-01

心の病を持った男が、食べることにすら執着心も持たずにただひたすら、自分の中に巣喰うよこしまで迷いに迷った精神と闘う、要するに精神病の男が、水と牛乳だけを頼りに生活し、己の行動を、日記形式で表現しているのが、この短編小説です。


水と牛乳だけで、人間がどの位、生き延びられるか実験した人はいないかもしれませんが、この短編小説に登場する情緒不安の男が口にするのは水か牛乳で、時には水だけでもあり、時には牛乳だけなのです。


ただ、ややこしいことですが、精神が錯乱気味なので、自分自身がほんとに水を飲んだのか、牛乳を飲んだのかよくわからない。朝おきて、牛乳ビンを見ると牛乳が一滴も残ってない――自分では飲んでない、と思っているのです。


夜中に誰かが入ってきて牛乳を飲んでしまったのだと思い込む。


男は次の晩は、水さしにも牛乳ビンにもしっかりと栓とカバーをかけて、絶対に他人にふれさせまいとしてねむりにつき、翌朝みると、また、水も牛乳も無くなっている。


この男の精神異常は、まさに水と牛乳の消失からはじまっていくのです。自分の部屋に自分以外の何物かがしのびこんで、水も牛乳も飲んでしまうにちがいない「一体そいつの正体は何者なのだ」と。


日記風に取り上げて、ざっとこんな調子です。『(前略)水と牛乳とだけテーブルの上におき、その二つのビンを白いモスリンの布でつつんで、栓はかたく結わえつけておいてみた。それから、唇や、ひげや、両手にチョークをなすりつけて、ベッドにはいった。』


男は牛乳や水を自分が飲んだ場合はチョークが牛乳についてよくわかるようにしてベッドに入りこんでいるのです。


ところが翌朝めざめてみると『(前略)夜具にさえチョークのあとはついていなかった。ビンをつつんだ布にも汚点(しみ)はなく、もとのままだった。おれは、おっかなびっくり紐を(ひも)をといてみた。水はぜんぶ飲んであった!牛乳もすっかり飲んであった!ああ、神よ!……おれはすぐパリへ行こう。』


男の神経衰弱的な妄想はとどまるところを知らないのです。


男は夢遊病者のように、パリに出向いて、医師にあったり、いろいろの人を訪問したりして、自分自身の心の中にうごめく何物かを探りあてようとするわけですが、依然として錯乱と狂気はつのるばかりで、悪いことに、ある科学雑誌で次のような記事まで読み、さらに混乱する。


『1つのめずらしい報告がリオ・デ・ジャネイロからもたらされた。中世紀のころ、ヨーロッパ人をおそった伝染性の精神錯乱に酷似せる狂気――一種の狂気の伝せん病が目下、サンパウロ州にしょうけつをきわめている。(略)自分らの眠っているあいだに自分らの生命を食(く)らい、また、水と牛乳のみを飲んで他の食物には手を触れないらしい一種の吸血鬼、たしかにいることはわかるが、見ることはできないある存在のために、自分らは、人間の姿をした家畜同様に、追われ、とりつかれ、支配されているのだという。』


我が身にとりついた、恐ろしき者、それは〝オラル〟というわけですが、作者言うところの「新生物・オラル」は確かに精神異常、錯乱者にとってみれば、底しれない恐怖以外の何物でもないでしょうが、健全な精神の持主でしたら、ここまでは悩まないでしょう。


男の結論はこの世にオラルが存在する限り、自分は死を選ぶほか無い、という結論に達してこの恐怖小説は終るわけです。


この作品を注意ぶかく読みますと、この新生物オラルは水と牛乳だけで存在していることになります。しかし、狂想にかられた男が、同じく水と牛乳しか飲んでないような描かれかたをしているのを読むと、やはり新生物オラルは、自分自身ということになります。


作者モーパッサンは、人間いや、悪魔にとっても「水と牛乳」は欠くことのできない食料であるといいたいようです。

本連載は1983年9月1日~1988年5月1日までに終了したものを平出君雄氏(故人)の家族の許可を得て掲載しております。

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