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今回はアメリカの有名な劇作家ユージン・オニールの作品を紹介します。この戯曲に登場する老酪農家は頑固で、年はとっても頑丈な体と強い個性の持ち主として描かれています。内容は3度目に迎えた妻と先妻の子との不倫や、広大なとうもろこし畑や、乳牛などの財産問題を中心に、人間の持つ物欲や情欲を見事に書き上げています。従って、―農夫、―酪農家ということでなく、人間の根源にひそむふへん的な課題を追っているのですが、主人公の老農夫が酪農経営者である点に強い興味を感じたので紹介することにしました。

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物欲と情欲の渦 頑固な老酪農家

1986-07-01

この戯曲の舞台は1850年ということですから、わが国ではペルーが浦賀に来た3年程前になりますので、かなり古い時代設定になっています。


場所は北アメリカ東北6州の総称で呼ばれるニューイングランド地方で、登場する主人公らは搾乳ととうもろこし栽培をやっている農家の一族が主役となっています。


家族ともめごとがあると納屋でねむり、ストレス解消に乳牛と会話し、頑固で、年はとっても元気いっぱいの老父キャボットと、その若い後妻アビー、先妻の息子3人(スィミアン、ピーター、エビン)が土地の権利や、情欲のすさまじいかっとうを展開していくのが筋ですが、その中でも後妻のアビーと、自分の息子のエビンの間に子供ができ、このため後妻アビーは生まれた子供をしめ殺し、老父キャボットが1人農場に残り、再び酪農ととうもろこし栽培を続ける筋立てが中心になっています。


さて、老父が息子3人に厳しく搾乳や畑仕事をいいつけてどこかに短い旅に(多分、女房を探すのが目的で)出るが残された子供の内、上の2人は西部でわきにわいているゴールドラッシュに心が飛びあまり農作業に熱中できない。


末息子のエビンは働くだけで死んだお袋のために土地を自分のものとして、頑固で荒々しい父からなんとか取り上げたいと考えている。


さて、次の会話を読んでいただきたい。


『ピーター牛が啼(な)いてるだ。早く乳しぼりに行くがいいだ。エビン(うれしくなって興奮し)じゃア、書類に名前かくだな?スィミアン(そっけなく)多分な。ピーター多分な。スィミアン今考えているとこだ(横柄に)仕事に言ったらどうだ。エビン(妙にワクワクして)またおっかぁの畑になっただ!おらのもんだ!牛もおらのもんだ!手さちぎれるまで乳ィ搾るぞ!(正面のドアから去る。2人ぼんやりこれを見送る)』


父親のるすに、彼が家族に内緒で〝つぼ〟にためた金貨を2人の兄達にわたし、土地権利の放棄をさせるためそのサインを求めている。


2人の兄は〝金探し〟に気もそぞろだ。2人はこの地を去るのだ。


末息子は夢がかなう、広いとうもろこし畑、搾乳作業も問題ではない。労働意欲は満々なのである。


次の会話は主人公の老父キャボットの考えがよく出ています。わずかな土地と数少ない乳牛から、ここまでたたき上げた男の一念がよくでています。


ただ、この時点で後妻アビーは、すでに夫を心の中で裏切り、末の息子のエビンに想いを寄せていることを見逃してはいけない。


そのための年老いた夫への土地や財産へのさぐりの会話ともうけとれる。だが、夫の執念はすさまじい。


『キャボット(ちょっと考えてから、渋々)持って行けるたァ思っちゃいねえだ。(しばらくしてから、あらぬ熱意をこめて)だが、もしできたら必ず持って行くぞ!さもなきゃ、できることなら、死に際に、畑さ火ィつけて、燃え上がるのを見てえもんだ―この家も、とうもろこし1本でも、木という木も、乾草1本まで、火ィつけて燃すだぞ!おらのもんは―汗と脂で無一文からでっち上げてわがもんにしたものを他人の手に渡さずに、おらといっしょにあの世へ行っちまうのをじっと見ていてえだ!(間。それから妙な愛情をこめて、続ける)牛は別だ。牛は逃がしてやる。アビー(きびしく)あたいは?キャボット(妙な微笑を浮かべて)おめえも逃がしてやるだ。』


老父キャボットの乳牛への愛着と愛情は見事に出ている。「牛は別だ!」この言葉は欲望だけではない。動物に対する愛情だ。


末息子と自分の妻との不倫を知って老父は嘆き悲しむ。とくに、ピューリタンである彼の心は乱れに乱れる。


頑固であればあるほど、強気であればあるほど、老父キャボットは何かに救いを求めて止まない。


納屋のあたたか味に、乳牛との会話にひそかに救いを求める、この年老いた酪農家があわれであり、読む者の心をしめつける。


『アビー(びっくりして)お前さんどこへ行くの。キャボット(妙な調子で)気の休まるとこさ行くだ―あったけえとこ―納屋さ行くだよ。(苦々しげに)牛となら話ができるだ。牛にゃアおらの気持ちわかるだ。畑のこともおらのことも知ってるだ。牛ィ見てると気ィ休まるだ。』と。


2人の息子も酪農をすてて彼の地に去った。妻と末息子は、えい児殺しの罪で保安官らに連れ去られる。 老父キャボットは解き放った乳牛を集めに、その地に1人とどまって再び農場を続ける決意をかためる。

本連載は1983年9月1日~1988年5月1日までに終了したものを平出君雄氏(故人)の家族の許可を得て掲載しております。

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