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食の安全もグローバルに 安全・安心の基本は情報公開 積極的に意見を交換消費者自らの判断促せ

2006-07-01

5月29日から「ポジティブリスト制度」が施行された。早くも6月3日の朝日新聞に茨城の4戸の酪農家が(報道は畜産農家)購入した100㌧のアメリカ産輸入牧草から残留農薬が検出され、農水省は農家や販売業者に牧草の出荷・使用の停止を指導した。(6月2日付け)と報道された。すでに牛は食べただろうに!牛は牛乳は大丈夫だろうか?


出荷及び使用の停止は牛乳をも意味するはず。使用時には農薬など思いもよらない。ローリーの中の生乳に問題の残留農薬が移行していたら抗生物質と同じ扱いだろう。


幸い農水省のホームページには「この牧草を給与した牛から生産された牛乳について関係県において分析した結果、該当農薬の残留は検出されていないとのことです」と報じられた。


しかし、報道の背後では、当該牧草を給与した生産現場で直ちに給餌停止はもちろん、生乳および乳製品への残留検査が開始され、その結果が判明するまで出荷が自粛された。


幸いなことに、今回は生乳および乳製品には残留農薬は検出されなかったが、自主廃棄だけでも100㌧あまり、さらに飼養管理の急変などのリスクは大きく、「食の安全」への対応はグローバル化の進展が急がれる。


独立行政法人肥飼料検査所が行った調査において、輸入牧草から日本では無認可の除草剤プロモキシニルが3回の検査で0・005~0・1ppm(定量限界0・005ppm)残留していた。新薬など残留基準が定められていない薬物の一律基準である0・01ppmを10倍越えていたので制度違反第1号となった。1980年代に各地の催しで、ポストハーベストと輸入食品のビデオが上演され、輸入食品への残留薬物汚染の実態を明らかにして、農作物や牧草栽培そのものへの農薬散布から、収穫物の保存・加工、さらに流通輸送(アメリカから船便で40日、さらに農場から港への輸送・集積日数が加算される。その間の鼠・昆虫の食害、カビの発生は必須である)その各過程で、薬物添加が日常的であると警告を発してきた。輸入港では、船倉から毒々しい赤色のドクロマークがついた薬袋が日常的に散見されたものだ。


1960年代は、若い人は知らないだろうが、母乳からDDTやBHC農薬が検出された。当時、全国の水田に散布したBHCは長期間分解されず、散布禁止後も稲ワラに蓄積され、ワラを給与された牛の乳からもBHCが分泌、1969年牛への稲ワラ使用が禁止された。


その結果、ルーメン発酵が不調となり乳脂肪率が全国的にかなり低下した。現在は口蹄疫侵入阻止のため輸入は全面禁止だが輸出国のワラからはいまだにBHCが検出されている。そのBHCは元を正せばメイドインジャパンだ。


BHCが日本で使用禁止された71年以降も製造能力が無いアジアで使用されてきた。輸入野菜の残留農薬も日本が持ち出して逆輸入したものだ。インドネシアでは東京から締め出されたディーゼルエンジンのトラックが見事に整備され、轟音をあげて景気向上に大活躍しているのを目撃した。今も昔も状況は変わっていないとの思いを抱きつつ帰国した。


余談だが、私はミツバチを飼っている。蜂は4㌔四方を活躍するので、ヘリコプターによる農薬散布時ははらはらさせられた。梨園での花粉媒介も適期があり、消毒薬の散布時期が接近していて蜂の健康維持と天候を考慮した移動が難しい。


さて、本題に戻るとしよう。ポジティブリスト施行直前の新聞記事に「農薬、隣の散布心配」と記述されていた。記事では「風で吹き飛ばされる農薬汚染」を心配しているが、そこは土地に密着した農民同志の連帯力で解決出来るし、各農家も多品目作等で生計を持続すべく、使用量を減らした上で適切な農薬を適期使用するという農業の複雑性を克服している。まさに百姓の醍醐味である近代農業をさらに展開させねばならなくなった。


輸入牛肉と輸入飼料


BSE対策で毎年約150億円を投入し、輸入検査試薬(31億円)で全頭検査を決行し消費者の不安を軽減、摘発不能とされていた30カ月齢未満の牛から2頭が陽性となった。ドイツ、デンマークでは24カ月齢以上を検査対象とし、ドイツでも30カ月齢未満の牛が2頭発見された。確率論では割り切れない情報・事実が潜んでいることを日本とドイツの検査が証明した。


英国でVCJD(変異型クロイツフェルトヤコブ病)に感染した人も菜食主義者(外国の菜食者は生半可ではない)が含まれていた。英国帰りの日本人も1人死亡し、献血制限が強化された。


いまだ日本のBSE感染源は確定できず、新たに鶏インフルエンザが登場し現場の対応は火の車だ。かつてはO-157検査の誤診で県が賠償した。仮にその誤診が逆見逃し判定であったとすると、人命が失われただろうし、BSE判定では女性検査官が自殺している。


輸入飼料や遺伝子組み換え作物の栽培には種子と農薬がセット販売されるが、増収目的で農薬を多く使用する傾向がある。ポジティブリスト外の新薬の食品への残留許容基準は、一律0・01ppmの規制を受ける。


食品や飼料でゼロリスクを満足させることは困難であるが、冷静に安全を探求する基本は、常に情報を公開し専門家・評論家を動員して消費者が自ら判断できるようなコミュニケーションを活発化することだ。露骨に政治・利害がらみの安全神話を作文してまで日米首脳会談の手土産とする採択は、前回同様の醜態を再演することになろう。


商社も安全を先行して健全経営を


日本の生産者は詳細に生産管理の全過程をチェックして記帳したものを保存し「安全・安心」を物理的に確保している。


一方、輸出国、特に世界を席巻するアメリカは戦勝国として敗戦国への援助感覚がいまだ強い。世界をリードする国ならば、豊かな先進国としてまずトレーサビリティの模範を示さねばなるまい。子牛の出生記録すらないという状態で済ませることなく、使用薬物・農薬等の使用法の手本、さらに副作用への対策を公開する必要がある。


輸入業者自身が安心して仕入れて日本国内で供給できる、ごく当たり前の商取引が持続出来るように、従来の形式的な査察から脱し、抜き打ちの監視が可能な体制を確保させるべきだ。


要するに、商社は酪農家が安心して使用できる飼料等を輸入する義務がある。これを遵守することで酪農家の信頼を得ることができるし、商売が繁栄するのだから。


前回の脊骨付き米国産牛肉輸入は単純なミスで済むのか?不適切な商取引として業者間の契約や金銭等の損失についての情報も公開し、これを反面教師として酪農家はもちろんのこと、商社自身の損失を未然に防ぐべきだろう。


アメリカの消費者も食品安全への関心が高まってきたようで、新着のアメリカの雑誌に「もっと牛肉を安心して食べましょう!食品検査に感謝を込めて」と牛肉協会が消費拡大のPR開始したと載っていた。先進国は国民の健康に関するウエイトを高めるものだ。別覧で牛に使用するホルモン剤は婦人への悪影響はないか、カンザス大学の見解が掲載されている。


このホルモンは日本でも使用されるが、女性の皮膚から吸収され、流産・メンス期間の短縮などの障害がある。


しかし、酪農家は手袋をしているし、石鹸で洗い落とせば皮膚に問題はないと答えていた。製薬会社のドル箱商品「泌乳ホルモン」は乳量が増加する記事ばかりで、障害を記述したものはないが、ポジティブリストには記載すべきだろう。


抗生物質は厳しく規制しているが、体内に常在するホルモンであっても、外部からの供用は何らかの影響を及ぼすはずだ。こちらもポジティブリストに記載すべきだろう。

本連載は2003年5月1日~2010年4月1日までに終了したものを著者・中野光志氏(元鯉淵学園教授)の許可を得て掲載するものです。

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