牛飼い哲学と
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酪農から地球を考える 太陽エネルギーを有効に 酪農が担える地球環境対策休耕地の草地化で貢献

2007-05-01

「カラダで地球を考える」。新聞に紹介された書評本のタイトルである。たまたま著者が私と同姓のノンフィクション作家、中野不二男氏で、大宅荘一賞受賞者、その著者、自らの体験レポートである。


なにしろ、自らが「口(くち)」に入れたもの(食物+酸素+水)と出したもの(炭酸ガス+尿+便)の計量結果をまとめている。


きっかけは、愛犬の観察からで、愛犬は日頃から元気に大量に食べては大量に出すことを繰り返している。この収支を測定してみたら、食べた固形物は590㌘。一方糞の重量は880㌘。差し引き290㌘増加しており、犬は見かけ上、食べた量の半量もダイエットしていたことになった。


厳密には呼吸によるエネルギー消費や水分も考えなければならない。そこで測定精度を上げるため、自らを実験装置「ヒューマン・カロリーメーター」に仕立てて、平均的な1日の摂取量2500㌔㌍を「口(くち)」にしたら、自分が消費した酸素は569㍑、吐き出した炭酸ガスは500㍑と測定。これは265㌘の炭素を肺から吐き出していることになる。物理化学公式から、1モルの気体は22・4㍑。分子量などから算出できる。エネルギー計算の基礎数値を思い出してください。


この肺呼吸代謝から地球温暖化問題へ、さらに切実な食糧自給率へと関心を抱かせている。これを機会に「食べて、吸って、出す私達および牛達」は、我々牛飼い仲間の健康問題を通して、安心・安全の畜産物を合理的にかつ持続できる経営を目指す一助にしたい。


生物物体構成元素


人や牛が摂食する食物は、主としてエネルギー源になる炭水化物・脂肪および蛋白質である。


これらの構成元素は字が示すごとく、前者2物は、炭(C)と水(H2O)の化合物であり、構成割合は炭素(77~40%)、水素(12~7%)、酸素(53~11%)で、蛋白質だけが窒素(18~15%)、硫黄(5~0%)を含んでいる。


一方、人体を構成する元素は、酸素62%、炭素21%、水素10%、窒素3%カルシウム1・9%、硫黄0・16%、ナトリウム0・8%などで、身近な飼料作物肥料の、窒素、燐酸、カリウムとは趣が違いすぎる。


酸素、炭素、水素、窒素が約96%を占め、3%しかない窒素は肩身を狭くしている。水分は体重の約60%を占め、無機物質(ナトリウム、カリウム、塩素など)や有機物質(蛋白質、炭水化物など)を含んだ体液として存在する。


その体液は細胞間質液(15%)と細胞内液(40%)に分けられる。この水分を除いた残りの半分、20%が蛋白質、脂肪は15%、骨は5%である。


注目すべきは炭水化物が1%以下で、血糖、肝グリコーゲンに痕跡を残すのみで、摂食する食物の65%が炭水化物であると認識されたい。筋肉や筋(すじ)、筋センイは蛋白質の塊なのだ。


代謝呼吸・酸化


食物の炭水化物と脂肪が消化分解(代謝)されると、肺呼吸から取り込んだ「酸素」で酸化され、最終代謝生成物質である「炭酸ガス」と「水」、さらに生命保持の「エネルギー」を産生する。「水」は水そのものとしても摂取するが、「炭酸ガス」は体内代謝からのみ生成される。そのため、この炭酸ガス生成量からエネルギー産生量が算出できる。


炭水化物の代表であるブドウ糖180㌘(1モル分子)は、6分子の酸素(96㌘)で酸化され、6分子の炭酸ガス(264㌘)と6分子の水(180㌘)、さらに678㌔㌍のエネルギーを産生する。


つまり、1㌘のブドウ糖からは3・76㌔㌍、また炭酸ガス1㌘が発生した時には2・57㌔㌍発熱し、0・68㌘(180㌘÷264㌘)のブドウ糖が代謝されている。


このように炭酸ガスを吸着剤で採集し、計量すれば、代謝された炭水化物量と産生されたエネルギー量を知ることが出来る。


エネルギー不滅・保存の法則


物質の化学変化に伴うエネルギーの総和は一定で、その反応の化学反応熱の総和は始めと終わりの状態で定まり、途中経過には無関係であって、エネルギー不滅の法則・熱総和一定、保存の法則といわれる。食物が体内で完全消化で発生する熱量は、体外のカロリーメーター装置で25気圧の酸素ボンベ内で一気に燃焼させて生じた発熱量に等しい。


これは、ボンベの水温度上昇を測定した熱量に等しい。このようにして求めたエネルギーを「総または粗エネルギー=GE」という。


各種食物の平均GEは、1㌘当たり炭水化物4・1㌔㌍。蛋白質5・8㌔㌍、脂肪9・4㌔㌍であり、これを換算係数とし、食物構成栄養成分量毎に掛け合わせて総カロリーを算出する。


換算係数不明の食物1㌘当たりのエネルギーは、炭水化物と蛋白質を4㌔㌍、脂肪は9㌔㌍を簡易計算に用いる。


地球温暖化と炭酸ガス


自然を相手にする酪農も、地球温暖化には加害者であると過激に論じられる傾向が強いが、京都議定書を拒否している先進国のアメリカが、全地球での4分の1を占める炭酸ガスを排出し、我が国は6%で、ドイツ・フランスの2倍量という。1人年間1㌧、1日3㌔(1・5㌔㍑)の炭酸ガスを排出し、内訳は食事で0・5㌔㍑、あと1・0㌔㍑は化石エネルギーの消費で排出している。車、電気、生産活動で排出、例えば、ドラム缶風呂を石油(発熱量は1㍑=10メガ㌍)で沸かすと、5メガ㌍(200㍑×温度差25℃=5メガ㌍)必要となり、石油0・5㍑の燃焼が必要で、炭酸ガスは1・0㌔㍑(2㌔)を排出することになる。


輸入飼料や食糧は、機械化、多肥生産から遠距離輸送と、これらに付随する炭酸ガス排出量の増加、窒素・メタンガスの増加をもたらし、地球環境への負荷を増大させている。


環境白書では、2百年前までの地球環境は、炭酸ガス濃度が殆ど変化せず280ppm(0・03%)レベルであったが、産業革命以後の化石燃料エネルギーの消費拡大とともに急激に増加。現在360ppmに達し、温暖化が実感させられている。


国内休耕地の草地化など「太陽エネルギー」の有効利用による炭酸同化・酸素産出増から、酪農も貢献できる余地は多い。

本連載は2003年5月1日~2010年4月1日までに終了したものを著者・中野光志氏(元鯉淵学園教授)の許可を得て掲載するものです。

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